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あくびをしながら体を起こすと、こたつ布団が肩から滑り落ちていく。
すっかり明るくなった空を窓辺から眺めても、何がどうなっているのか、寝ぼけた頭ではサッパリ思い出すことができなかった。
だが思考よりも目覚めの早い五感は、部屋のわずかな変化を鋭敏に捉えていた。
「っ!?」
カタッ、という微かな音に体が跳ね起きる。
音を音として認識した瞬間、正臣はこたつ布団を跳ね上げるようにして床を転がっていた。
その動きに音を立てた相手が戸惑うのが空気で分かる。
「……あ」
音の発生源は、寝室と居間を隔てる襖。
その影に隠れるようにして、見覚えのある少女が顔をのぞかせている。
正臣の動きを見た少女は、無表情ながらも微かに見開いた瞳に驚きを宿していた。
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