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 ことりは素直に正臣へ近付くと両手でおにぎりの皿を受け取った。  それから正臣が差し出す漬け物の小皿を見つめるが、ことりの両手はおにぎりの平皿から離れようとしない。  ことりの細腕でふたつを一度に運ぶのは難しいのかと判断した正臣は、苦笑を浮かべながら一度漬け物の小皿を引いた。 「焦ることはねーわな。落とさないように、ひとつずつ確実に運んでくれればいいから」  その言葉に小さく頷いたことりは、慎重に方向転換してソロリソロリとこたつへ足を運びだした。  平皿を胸の前で捧げ持つように抱えて歩く姿は、まるで巫女が神饌を運んでいるかのように見えるが、残念なことに平皿の上に置かれているのは冷やご飯で握られた変哲もないおにぎりだ。  ソロリとこたつの傍らに膝をついたことりが、平皿をこたつの天板の上にそっと乗せて小さく安堵の息をつく。  まるで大仕事をし終えたかのような仕草に、正臣はまたひそやかに苦笑をこぼした。
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