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「汁物だけど、お吸い物と味噌汁だったらどっちがいいかな? 豆腐がないから、具材はお麩とネギとワカメくらいしかねーんだけど」  膝を上げたことりがパタパタと戻ってくるのを眺めながらガスコンロへ向き直る。  コンロの上には片手鍋が乗せられていた。  中にはことりに説明した通り、昨日店で余ったダシが入れてある。  うどんや温蕎麦にも使えるが、おにぎりや煮物もあることだし、ここは普通に汁物にするのがいいだろうと考えながら正臣は言葉を紡ぐ。 「早く作れるのはお吸い物だろうけど……」 「赤出汁(あかだし)
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