第1章

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期待した返事はなく紡いだ言葉は空に溶ける。 彼は屋上にいる――確信に近い予想。 私と彼は考え方が似ているのか予想はだいたい当たる。 でも今日は滅多にない『ハズレ』なのだろうか。 空気が冷たい。 もう一度屋上を見渡し、誰もいないことを確認する。 仕方ない、とため息を吐き教室に戻ろうと扉のノブに手を掛けたときだった。 「ここだよ」 鼓膜を振るわせた声は確かに探していた人のもの。 辺りを見渡し高橋を探す。 「左見て」 言葉通り、左を向く。 タンクの端から見える綺麗な黒髪とひらひらと揺れる手がここだと位置を知らせている。 高橋のいつものやる気のない調子にくすっと笑いが溢れる。
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