邂逅

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?ちょうど親からの仕送りが入ったばかりで、 多少の贅沢も許されるだろうと思い、 掘り出し物でもないかと目にとまった店に出たり入ったりを繰り返していた。 日も暮れかかりの夕方5時頃、 ある一店の古びた古書店に立ち寄った。 「天獄堂」 また奇妙な店名が好奇心をかきたて、 吸い込まれるように店の中へと歩みを進めた。 店の外観と同じく、 陳列されている本はかなり古びたものが乱雑に積み上げられていた。 本のタイトルからするに、 民俗学や怪談、 宗教学、 心理学など自分の興味関心を引くジャンルのものばかりで、 心踊るとはまさにこのことなのだと実感した。 しばらく漁っていると、 一カ所だけ妙にポッカリとした空間に一冊の黒い革の本が置かれていた。
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