ReplicA

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空の青さをたしかめる。あれは世界に一つだけ。誰のものでもない。キミがいつどこに立っていても。頭上を仰ぎ手をのばす。それがキミの言う空。キミだけが周知の空。 キミは空をゆびさす。白銀の雲がペガサスになってゆく。はばたくたびに抜け落ちる羽がシャボン玉となり、ドミソ、レファラと弾けては、虹の切れ端になって青空へととけてゆく。 日没の鐘が鳴る。夕闇に押しつぶされ、真っ赤に膨らんだ海月が火花を散らす。濃紫の風がキミの指先にとまる。キミは水飴みたいにそれを舐めとり、深遠な空を肺に蓄え、いつしか青空しか愛せなくなってゆく。 『わかちあえない空』
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