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やっとの思いで手に入れた詩集を
浴槽に落としたボクの悲しみが
キミにわかるかい
本屋の棚に見つけたことを
喜ぶべき運命とするべきならば
ボクが湯に浸かりながら
詩集を読んでたことや
睡魔に負けたこと
力の抜けた手からズレ落ちて
びしょ濡れになることも
そしてそれを
裸で懸命に乾かすことも
どれも体験すべき
悲しむべき運命だったんだね
ボクが本屋に行くことや
行こうと思いたったこと
その詩集を知ったことや
読みたいと欲したこと
まだその存在を知らずにいた間のことや
それよりももっと前のこと
生まれたことや キミに恋をしたこと
知らないほうがいいことがあることや
無愛なSEXと惜別を覚えたこと
無意識のままで
喜びと悲しみを繰り返してきたこと
詩集がびしょ濡れになるまで
ぜんぶが運命だと気づけなかったんだ
キミは夕べのボクを想像しては
吹き出すけど
確かにあったはずの目の前が
空っぽになってから気づくから
いつも騙された気分になってるんだ
ボクだって。
『ぬれた詩集』
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