ReplicA

33/40
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
注文をとりにきた女性店員のネームプレートを、なにげなく見ただけなのに、彼女に、胸を見られた、と思われたと、思ったボクの目が宙を泳いで、ボクが恥ずかしさで溺れていく様子を、店員に見られていたら、それはそれでもっと恥ずかしい、と思ってしまったら、挙動不審ね、って思われたと思ってしまって、固まって、視線を落とした瞬間、彼女の「ご注文は?」という、ボクを見透かしたかのような微笑みに、この一瞬の一連のボクの失態の一部始終を、手のひらの上で転がして、嘲笑っているかのように思えてしまったので、ボクはもう一度、胸のネームプレートの、彼女の名前をちゃんと見ることで、ボクの邪心をふりはらう。 『邪心』
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!