ReplicA

38/40
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
月の引力に導かれてるみたいにスクランブルを続ける横断歩道の底で、沈没船は引き揚げをあきらめた。あざとく射ちこまれた色とりどりの種が、皮膚を破ってキミに痣色の花を咲かせている。 キミは犠牲者じゃないよ。上手に喋れなかっただけさ。だから沈黙を恐れて、沈没した。流線形へと崩れていくのを拒んだら、風あたりが強くなる。そんな薄っぺらな世界にいたのだから。 もし落ちこんで、埋もれてしまってもキミは、鋭く尖ったままでいてください。その透明度の切れ味で、丸みを帯びた似たり寄ったりの人混みに、綺麗な傷を描けたなら、いつかは誰かの導き手になれる。 『できること、できないこと』
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!