AndantE

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栞をはさんだ本がたまったら、ひらいても、ひらいても、途中から始まる物語。抒情、思想、哲学、批評。夢は、語り口調で表出してたら、夢想から解放されることはないみたい。 思い出のなかの音感だけをたよりに、禁じられた遊びを弾くとき、指先が迷い、弦に翻弄されても、暗いビル群に包囲され、圧倒的に隔てられてしまっても、ほんとうの空の形を忘れてしまうことはないよ。ぼくの空想は強靭だ。 現実は堅実さ。日夜いちばんそばにいてぼくを掴んで離さない。埋没はたやすいが、呼吸をしている甲斐がない。暮らすことはできたとしても、生きぬくこととはジャンルがちがう。だから栞はね、その忘却を忘れぬための唯一の剣だ。 『寝ても醒めても』
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