第2章

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「モリエールでございますか、坊ちゃま」 とくとくと注がれる 香り高い真紅のアフタヌーンティー。 「坊ちゃまはモリエールの最期をご存知で?」 「いいや」 目映いほど陽の差すテラス席から 広い庭園を見渡し中川が言った。 「『病は気から』という作品の公演中、病に倒れて帰らぬ人に」 「それ本当なの?」 「私嘘は申しません」 真摯な物腰で一歩下がると 老執事は悪戯に微笑んだ。
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