日常

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  「昨日、寝てたら、ふわっと身体が浮き上がる感じがしたんですよー」  事務所の窓際でインスタントの珈琲をかき混ぜながら、流行(ながれ)が言った。  自分のデスクでパソコンを打ちながら、八代は、ちらと、そちらを見た。 「風邪で熱でもあったんですかねー?」 と言う流行に、馨が、 「本当に浮いてたんじゃないですか?  ありますよ、そういうことって。  こう、目覚めて気づくんですけど。  あっ、ちょっと幽体離脱しちゃってたなって」 と答えていた。 「そうなんですかー?  いやあ、今んとこ、そういうの、ないですねえ」  窓際の低いスチール棚に腰を預け、馨と流行が、脳が悪くなるような、ぼんやりとした会話を展開させている。
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