日常

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「私、やりたいです」 「じゃあ、お前、個人で事務所を開け」 「厭ですよ~。  じゃあ、流行さん」  えっ、と詰まった流行は、 「ぼ、僕も受けてません。  猫、何度か逃がしちゃったから」 と素直に内情をばらし、答えていた。  ええーっ、と馨は不満げに声を上げている。  猫好きなら、その辺の猫でもかまってろ……。  しかし、不安だ。  この二人で事務所をやってくことになったら、今、すぐにでも潰れそうだ。  やはり、自分がやめるわけにはいかないか、と思う。  なんだか、駄目亭主とどうしても離婚できない妻のような気持ちで、溜息をつき、早くに来た珈琲を飲んだ。
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