455人が本棚に入れています
本棚に追加
「私、やりたいです」
「じゃあ、お前、個人で事務所を開け」
「厭ですよ~。
じゃあ、流行さん」
えっ、と詰まった流行は、
「ぼ、僕も受けてません。
猫、何度か逃がしちゃったから」
と素直に内情をばらし、答えていた。
ええーっ、と馨は不満げに声を上げている。
猫好きなら、その辺の猫でもかまってろ……。
しかし、不安だ。
この二人で事務所をやってくことになったら、今、すぐにでも潰れそうだ。
やはり、自分がやめるわけにはいかないか、と思う。
なんだか、駄目亭主とどうしても離婚できない妻のような気持ちで、溜息をつき、早くに来た珈琲を飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!