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ここは間借りしてるマンションの一室。
いつも通りに俺は、ソファに寝転がり、足を組みブラックコーヒーを啜る。
そして、いつものようにドアの音がカチャッと鳴る。
「今日も、依頼人連れて来たよー。」
「あんたが持ってくる依頼は、ロクなもんじゃねーだからヤダ。」
俺は ‘ ウチ ’ の常連客、岩泉りりあに向かって吐き捨てた。
「そんな言い方ってヒドくなぁい?」
「…フー。まぁあんたの依頼をお聞かせ願おうか?お嬢ちゃん?」
俺は起き上がり、股を開いて座り、手を組み、両肘を両膝に乗っけて、りりあの隣にいる、小さな女に言った。
「う…私っお嬢ちゃんじゃないもん!もう19歳だし…。」
「タメかよ!!ちっちぇ~なぁもう少し可愛いさがあったら合格だったのによ。」
すかさずりりあが、
「合格ってナニよ…。」
とツッコむ。
女はむぅっとした顔で、
「りりあちゃんコイツ大丈夫なの?こんな失礼でガキな奴に頼んでっ!!!」
『こんなに初対面の奴に言われる俺って…。』
心で泣いている間にりりあが、
「あははは、大丈夫、大丈夫。脳内細胞はクソガキだけど、依頼(しごと)はちゃんとする奴だからさ。」
かるーく笑い飛ばしながら、ポンポンと女の肩を叩いた。
女はちょっと腑に落ちない感じで、口を開いた。
「好きな人がいて、ラブ…恋文を代筆してほしいの…。」
「プッ今時…ラブレター?声に出して告ればいいだろー?だから女の依頼はイヤなんだよな~。」
「ナニコイツ!?それも出来ないから、ラブレター書こうと思って、レターセット買ったケド、文章が思いつかないから、
こんな事って分かっていても、頼みに来たんでしょーが!!バーーカーー!!!ハァ、ハァハァ。」
『…顔真っ赤にして、必死にキレて本気(マジ)だねぇ~。ヒュ~。』
俺は、心の中で女を讃える口笛を吹き、女は叫び過ぎて息を切らした。
「フーン。左様ですか。まぁゲンコー謝礼は5万ですねー。値引きしないからねー。お嬢ちゃん。」
「引き受けてくれるの!?」
女の顔はパァッと輝き出し、目もキラキラしていた。
「でも高ーい、それにお嬢ちゃんじゃないし…。」
「あ?俺、おじょーちゃんの名前知らねぇし。」
「‥あんなよ、毛瀬(けせ)あんな!よろしくお願いします。ペコ。」
いきなり礼儀正しくしたあんなに、俺は笑った。
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