messeage1 何れも求めようとも 月夜には敵わない

4/11
前へ
/23ページ
次へ
そして、玄関で二人を見送ろうとしていた。 俺は端に立ち、片腕を上の方に上げ、片肘でカベを受け止め、片足で反対の足のふくらはぎを、だらしなく掻きながら、 「んじゃ明日に、ラブレターを取りに来いよ。」 女は目を丸くさせながら、 「えっ!?そんなすぐ出来るの?」 「ハハッ。俺を誰だと思ってんだよ。文の天才だゼ。」 「…。自分で言っちゃってますけど…。」 「あーホントにゆうすけに任せとけば大丈夫!!文(ふみ)の言葉はね…私もソレで ‘ 助かったし ’ …。」 「うーん、りりあちゃんがそう言うなら…。じゃあ、また明日。」 カチャッとドアを開け、ガチャンと閉め二人は出て行った。 俺はその後、右手を物凄いで走らせ、恋文を完成させた。 「フ~。楽勝だったゼ。やっぱカンチンな依頼は違うなぁ~。今日は、女とばっかしゃべって疲れた…もう寝よ。」 変に独り言も板についている、この生活にも俺はすっかり慣れてきていた。 うっすら昔の事を思い出しながら、俺はベッドで安らかに眠っていた。 翌日 ──── 。 目に朝日が照らし、ギラギラとした太陽の眩しさで眠りから覚めた。 「…あー。なんかダリぃーなぁ…。」 眠気覚しのコーヒーを飲もうとした瞬間、 『ピーンポーン。』 「あーもー起きたばっかりなんですけどぉ~…。」 インターフォンのモニターのボタンを押して、コーヒーカップを持ちコーヒーを啜りながら、 「…ズズ…。あーい。」 「あんなでぇーす。出来ましたか?」 「チッ。はぇ~よ。まぁどうぞー。」 オートロックを解除し、俺がいる部屋にあんなが、入って来た。 「おっじゃましまーす。」 「ハァ…。朝から元気だなぁ~。今日は一人?」 「ラブレター取りに来ただし、一人でいいかなっと。ではでは拝見させてくれる?」 そう言いながら、あんなはソファに座った。 すると、チンッとオーブンの音が鳴る。 「っとその前に…焼けた焼けた、俺のトーストちゃん。朝メシ、あんなも食うか?」 俺はたっぷりマーガリンを塗り、カリッとひとかじりしながら、機嫌よくあんなにも振ってみた。 「いやあ、いらない、そんな事より見せてよ。」 「カリッカリッ うめぇなぁ、まぁそう焦んなって、チュパッ。」 人差し指のマーガリンのベタつきを舐めながら、カワイイ便箋(びんせん)の封筒を、 反対の手の人差し指と中指で挟んで、ピッと飛ばして渡した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加