7人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、玄関で二人を見送ろうとしていた。
俺は端に立ち、片腕を上の方に上げ、片肘でカベを受け止め、片足で反対の足のふくらはぎを、だらしなく掻きながら、
「んじゃ明日に、ラブレターを取りに来いよ。」
女は目を丸くさせながら、
「えっ!?そんなすぐ出来るの?」
「ハハッ。俺を誰だと思ってんだよ。文の天才だゼ。」
「…。自分で言っちゃってますけど…。」
「あーホントにゆうすけに任せとけば大丈夫!!文(ふみ)の言葉はね…私もソレで ‘ 助かったし ’ …。」
「うーん、りりあちゃんがそう言うなら…。じゃあ、また明日。」
カチャッとドアを開け、ガチャンと閉め二人は出て行った。
俺はその後、右手を物凄いで走らせ、恋文を完成させた。
「フ~。楽勝だったゼ。やっぱカンチンな依頼は違うなぁ~。今日は、女とばっかしゃべって疲れた…もう寝よ。」
変に独り言も板についている、この生活にも俺はすっかり慣れてきていた。
うっすら昔の事を思い出しながら、俺はベッドで安らかに眠っていた。
翌日 ──── 。
目に朝日が照らし、ギラギラとした太陽の眩しさで眠りから覚めた。
「…あー。なんかダリぃーなぁ…。」
眠気覚しのコーヒーを飲もうとした瞬間、
『ピーンポーン。』
「あーもー起きたばっかりなんですけどぉ~…。」
インターフォンのモニターのボタンを押して、コーヒーカップを持ちコーヒーを啜りながら、
「…ズズ…。あーい。」
「あんなでぇーす。出来ましたか?」
「チッ。はぇ~よ。まぁどうぞー。」
オートロックを解除し、俺がいる部屋にあんなが、入って来た。
「おっじゃましまーす。」
「ハァ…。朝から元気だなぁ~。今日は一人?」
「ラブレター取りに来ただし、一人でいいかなっと。ではでは拝見させてくれる?」
そう言いながら、あんなはソファに座った。
すると、チンッとオーブンの音が鳴る。
「っとその前に…焼けた焼けた、俺のトーストちゃん。朝メシ、あんなも食うか?」
俺はたっぷりマーガリンを塗り、カリッとひとかじりしながら、機嫌よくあんなにも振ってみた。
「いやあ、いらない、そんな事より見せてよ。」
「カリッカリッ うめぇなぁ、まぁそう焦んなって、チュパッ。」
人差し指のマーガリンのベタつきを舐めながら、カワイイ便箋(びんせん)の封筒を、
反対の手の人差し指と中指で挟んで、ピッと飛ばして渡した。
最初のコメントを投稿しよう!