30人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「なに言ってんですか。あたしが……」
『あたしがフッてやったんです』って言おうと思った。
いつもの自分ならそれくらい言えたはず。
だけど……。
予想以上にあたしの心は傷ついていたみたいで。あっという間に視界が滲み涙が溢れた。
「マジか……。ってか泣くなよ」
彼が困っているのはわかっていた。だけど泣き止まなくちゃと頭の中で思えば思うほど、次から次へと涙が溢れ止められない。
するとカウンターから出てきた彼はあたしを周りから隠すように隣に座り、優しく肩を撫でてくれた。
「……ごめんなさい」
涙が止まり鼻を啜りながら謝るが、泣いてしまった恥ずかしさから気まずく先輩の顔が見れない。
「明日暇?……暇だよな。9時に駅に来いよ」
それだけ言うとバンバンと背中を数回叩き仕事に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!