7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
姉様が、あの烏帽子を蛙に乗せたような左大臣様のお嫁に行く日。
「この桜吹雪はわたくしをあの方元に運ぶ為にあるのだわ!」
ただ散り落ちた桜の花びらを箒で小坊主が集めた山。
それが風で飛んで行っただけなのに、姉様はそう歌って屋敷を去っていった。
「…朽ちろ。」
消えそうな声で姉様の消えた跡に呟く。
花も何もない桜、それに自分を重ねたかった。自分がもっと矮小に見えてそれすら出来ない。
「お燐様、あの…あまりそういうことは口に出されてはさらにお嫁に行けなくなりますよ?」
侍女のさとりだけが笑いながら心配してくれた。この物好き侍女以外誰も私のことなど見向きもしない。
姉様のように細くない、猫のような大きな目。下膨れていない小さくて貧素な顔。
私はこの平安の時代に、この醜い顔のせいでお父様の政治道具としてすら使って頂けない塵なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!