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その場所は遠い田舎の、野蛮人が住んでいると伝えられている地だった。 「あそこの野蛮人の長が嫁を欲しがっているらしいからな。 お前はそこで長に可愛がってもらえ。」 お父様にそう言われた私は、さとりを連れて何とかその地まで歩いたのだった。 「いいか、お前は今から自分の惨めさに耐えかねて、左大臣様の金を盗んで逃げ出した盗人だ、いいな。」 ついに私が立てた役は姉様とお父様の身代わりだった。 「あひゃひゃひゃひゃ! お燐様、遂に捨てられちゃいましたね! 身分なんて関係が無くなったのに、亡霊の様にさとりが付いてくる。 私達はただただ足だけを動かした。 何も見てない目が集落を捉えるまで。夢遊病の様な心地だ。 捨てられた絶望感と、遂に役に立てたのに悲しい気持ちが胸をしめつける。
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