第二部、序章

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人の死とは、呆気ないものだ。 心臓を一突きすれば。首を斬れば。 人は簡単に殺せるし、死ねるのだ。 人が居なくなれば、残された者は悲しむ。 涙を流す者だっている。 そうやって別れを惜しむのだ。 時には、受け入れられない者だっている。 しかし、別れは誰にでもあるのだ。 人の死を見送り、自分も見送られる。 また、誰かの心に悲しみを残すのだ。 だが、悲しみが晴れないわけではない。 時の流れは、やがて人々の悲しみを癒す。 涙を流すほど悲しい別れをしても。 時がたてば、薄れていくのだ。 それが、人間の悲しくも、優しい運命なのだから。 しかし、それでも運命に抗う者だっている。 決して忘れられない痛みを背負う者だっている。 忘れさえすれば楽になるのに、自ら苦の道を選ぶ者だっている。 それには様々な理由があれど。 皆、その胸に罪を背負っている。 その罪は、決して逃れることの赦されない、鎖となって。 罪人を苦しめ続ける。
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