第1章 condition

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「…わぁ、きれい!」 このあたりは、高いビルもなく、いろんな場所で花火を見ることが出来た。 私たちは、人が密集している河原を避け、少し離れた高台の公園にいた。 先輩が歩くままについて行ったら、こんないい場所を発見。 周りには、何組かカップルがいて、私達も恋人同士に見えるかな?なんて、しょーもないことを考えて幸せな気分になっていた。 絶え間無く打ち上がる花火。右にいる先輩を盗み見ると、花火の光に照らされた横顔が、どこか寂しさをまとっていた。 風が吹くと揺れる髪は、やっぱりきれいで、触ってみたい、と何度思ったことか。 あぁ、いいな、彼女さんは。こんなにも素敵な理玖先輩を、独り占めできるなんて。 ――最後の、思い出にしよう、と決めた。 誕生日に、好きな人と花火を見れたことだけで、私はうんと、幸せ。 少しずつ、先輩への想いを断ち切っていかなくちゃね。 だから、最後に、ちょっと意地悪な質問を。 「理玖先輩、」 「ん?」 「私なんかと花火見ていて、彼女さんに、怒られませんか?」 悲しい顔じゃなく、いたずらっぽい笑顔で聞けてる? 気持ちがバレたら、だめ。最後に、先輩が、“彼女”の存在を認めたら、きっぱり諦められるような気がしたの。 「…………そうだね、」 悲しそうな顔で答える先輩を見て、罪悪感が湧き出てきた。 「すみません、図々しくお誘いしてしまって…」 私が無理に誘ったからだ。 けど、後悔はない。今すっごく幸せだから。 謝って、そして、終わりにしよう。
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