2人が本棚に入れています
本棚に追加
「…わぁ、きれい!」
このあたりは、高いビルもなく、いろんな場所で花火を見ることが出来た。
私たちは、人が密集している河原を避け、少し離れた高台の公園にいた。
先輩が歩くままについて行ったら、こんないい場所を発見。
周りには、何組かカップルがいて、私達も恋人同士に見えるかな?なんて、しょーもないことを考えて幸せな気分になっていた。
絶え間無く打ち上がる花火。右にいる先輩を盗み見ると、花火の光に照らされた横顔が、どこか寂しさをまとっていた。
風が吹くと揺れる髪は、やっぱりきれいで、触ってみたい、と何度思ったことか。
あぁ、いいな、彼女さんは。こんなにも素敵な理玖先輩を、独り占めできるなんて。
――最後の、思い出にしよう、と決めた。
誕生日に、好きな人と花火を見れたことだけで、私はうんと、幸せ。
少しずつ、先輩への想いを断ち切っていかなくちゃね。
だから、最後に、ちょっと意地悪な質問を。
「理玖先輩、」
「ん?」
「私なんかと花火見ていて、彼女さんに、怒られませんか?」
悲しい顔じゃなく、いたずらっぽい笑顔で聞けてる?
気持ちがバレたら、だめ。最後に、先輩が、“彼女”の存在を認めたら、きっぱり諦められるような気がしたの。
「…………そうだね、」
悲しそうな顔で答える先輩を見て、罪悪感が湧き出てきた。
「すみません、図々しくお誘いしてしまって…」
私が無理に誘ったからだ。
けど、後悔はない。今すっごく幸せだから。
謝って、そして、終わりにしよう。
最初のコメントを投稿しよう!