第1章 condition

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バイトは、とても楽しかった。 フロアリーダーの相原さんは、既婚者でパートだ、とか バイトは私と先輩の他に、5人いて、皆さん話しやすくて優しい方だ、とか 50代マスターは、とても気さくな人で、マスターと話したいために、通う常連さんもけっこういる、とか、 ここ数週間で知ることも多かった。 理玖先輩は、頼もしくて、仕事に対する責任感も強くて、 私のミスも、「大丈夫。」と言って何度カバーしてもらったことか。 そんな先輩に迷惑をかけないように、一生懸命がんばった。 仕事を覚えるのは大変だったけれど、人と関わり合うこのバイトに、やり甲斐を感じていた。 そしてなにより…、 理玖先輩とシフトが被ったときは、帰りに、ラーメンに連れて行ってもらうことも、あったり。 「腹減ったー、ラーメン!」 これが決まり文句。 先輩は大のラーメン好きらしく、よく1人で、いろいろ食べに行くらしい。 「私も、ラーメン好きなので!」 と、最初に、行きたいアピールをして以来、 「俺、今日ラーメンだけど行く?」 と、先輩が行く日に、誘ってもらうことがあった。 ちなみに、ラーメン以外は行ったこと、ないし、 バイトが終われば、先輩は、マイペースになり、あまり喋らないから、沈黙も多かったりする。 けれど、こうして隣を歩けることが、くすぐったくて、幸せで。 ただの、話をするだけの先輩・後輩から、 ラーメンを食べに行く仲、になれたのが嬉しくて、 “もっと、近くにいたい”と欲張りな想いが出てきた。 やっぱり、私は、先輩が 好き。 1番になれないことはわかっていたけど、せめて、後半として傍にいたい、と願った。
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