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バイトを始めて2ヶ月が過ぎた。
季節は、夏。私が大好きなシーズンだ。
8月もすでに折り返し、着々と夏休みが少なくなっていた。
そんな今日は、8月の、20日。私にとっては、大切な日で、どうしても叶えたいことがあった。
今日のあがり時間は、理玖先輩と同じ17時。一緒なのは、私が合わせたから。
タイムカードを切って、急いで着替えた。
そして、スタッフ専用出入口で、先輩を待つ。
ギィ、と扉が開き、出てきた先輩が、不思議そうに私を見る。
今まで、待っていたことなんて、無かったから。
「お疲れ様です、…っ、」
このあとに続けるセリフを、昨日練習したのに。
すっかり忘れた。
「あの、先輩、このあと用事とかって、…ありますか?」
あぁー、ほら。
もっと完璧に、スラスラ言う予定だったのに。
「いや、特にないけど。……、ラーメン食べたいの?」
やっぱり、先輩の中では、私と出掛ける=ラーメン、となっているらしい。
負けない、頑張れ、葉月。
「今夜!隣の市で、花火大会が、あるんです。一緒に、行って頂けませんか?」
言った、けど、先輩の顔が見れない。
ち、沈黙に耐えられなくて
「今日、私の、誕生日なんです。一人は、寂しいから、だから…」
と、こんなことを口走ったのを後悔した。
だって、こんなこと言ったら、先輩は……――、
「いいよ、行くか。」
ほら。優しいから、断れなくなったんだ。
押し付けることなく、一緒に行きたかったけど、しょうがない。
普通に誘ったら、断られたかもしれない。
「あ、ありがとう、ございます…。」
今にも溢れ出しそうな涙をこらえて、お礼を言った。
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