最後の嘘

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それで、晴れて養子ではなく実子として貰い子出来るなら、嬉しい限り。 慎介は、 「で、謝礼はいかほどなんですか?」 児玉は、慎介を値踏みするかのように見つめて 「昔は、直ぐ貰い子出来たんだけどな、今は物入りで」 「15万円で如何ですか?」 15万円と云えば、慎介の半年分の収入 直ぐに、用意なんて出来ない。 慎介は、 「ちょっと、考えさせて下さい」 児玉は、笑顔で 「良いですよ!」 「いまなら、半年後に産まれる赤ちゃん居るから、アリバイ工作するには一番良いんだけど」 「まだ、他にも貰い子欲しい夫婦も居てるんで、なるべく早く返事下さいな」 慎介は、家に戻ると児玉との話を、妻の春代と両親に話した。 確かに15万円と云えば、狩野家にとっては大金ではあるが、それで子どもが授かれるなら。 しかし、児玉から念を押されたのは、決して本当の母親を探さない事。 これは、お互いの為だからと。 しかし、子供の両親がどんな人物なのかは気になる。 氏より育ちとは言っても、持って産まれた性格も有る。 色々親子で相談した結果、それしか他に方法も無いので、お金で解決出来るならと、児玉を頼る事にした。 其からは、児玉の指示で春代のお腹にさらしを巻き、少しずつ目立つようにバスタオルや座布団を切り、村人へのアピール。 そして、とうとう本当の母親が出産と報せを受けると、児玉が手配した産婆さんが産まれたばかりの赤ちゃんを、夜中こっそりと抱いてやって来た。 玉のような可愛い男の赤ちゃん。 夫婦は、手を取って喜び 「これから、この子が俺達の子供だ!」 「名前、考えないと」 夫婦のこれからの希望となる男の子 そこから、【望】と 望は、両親の溢れる愛を受け、すくすく育っていった。 只、望が大きくなるに連れ、かなりきつめの天然パーマの頭に。 慎介夫婦は、完全なる直毛。 これは、子供が大きくなると気になるのでは? なので、春代は直ぐ美容院できつめのパーマを当て、肩迄あった髪の毛をバッサリと短く切った。 其からは、望・望と。 望も何不自由無く、両親の愛を受け育っていったが、ある日クラスの同級生から 「望って、貰い子なんやてな」 「俺の父ちゃんと母ちゃん、話してたの聞いてしもたんや」 「そやから、望は親と顔似て無いもんな」 子供は、時として残酷だ。 悪気無く、人を平気で傷つける。
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