最後の嘘

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それから、望には両親への不審が。 父さんも母さんも、僕を騙して! 大人なんて、嘘つきだ! 僕もこれからは、本当の事なんて話さない! それからは、望は何かにつけて嘘ばかり。 とうとう、春代も先生から呼び出しを受け 「最近、望君皆に嘘ばかりついて皆、困ってるんですけど」 「まぁ まだ精神的には幼いですから、家庭内で何かあったのでは?と」 春代は、担任の先生に何度も頭を下げ 「そうなんです」 「望は、最近急に嘘ばかりつくようになったので、気にはなってたんです」 「でも、思い当たる節が無いので、学校で何か有ったのか聞いても、何も言わないんです」 「今日は、父親も交えて望に聞いてみますから」と その夜、慎介と春代が望を座らせ 「最近、望は嘘ばかりつくようになったみたいだけど、どうしたんだ?」 「嘘ばかりつくと、誰も望の言うこと聞いて貰えないぞ!」 望は、真っ赤に目を腫らして睨みつけると 「父さんも母さんも、嘘つきだ!」 「今まで、僕を騙してたくせに!」 慎介も春代も、狼狽し 「望は、何を言ってるんだ!」 「お父さんもお母さんも、正直に生きてきて、望を一番に思ってる」 「望は、それさえ嘘だと言うのか?」 望は、泣きじゃくり自分の部屋に籠った。 慎介は、春代に 「望は誰かから聞いてしまったみたいだな」 「でも、何が有ろうと望は、俺達夫婦の子供だ」 「時間は掛かるだろうが、望も解ってくれるよ」 それからも、望の嘘は直らなかったが、夫婦で謝って済む問題なら、謝って望を助けた。 そんな望も、高校を卒業し社会人に。 相変わらず、嘘つき癖は持ったまま。 仕事も真面目に取り組まず、仮病を使っては女遊び。 そして、彼女を乗せてドライブ途中にトレーラーとの出会い頭の事故。 瀕死の望が病院に担ぎ込まれ、両親にも警察から連絡が。 慎介も春代も、直ぐ様病院へと。 春代は、望に付きっきりで看病。 望は、意識さえ定かでは無い 春代は、望の体を抱き締め 「お父さんとお母さんの嘘から、望をこんな目に合わせたんやな」 「ゴメンやで!」 「でも、望が一番と云うのは、本当やからな!」 薄れる意識の中、望に母の叫びが。 望は、 俺って、今まで何してたんやろ? こんな俺は、死んだらええねん。 そや、これが俺の最後の嘘。 完
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