幽閉

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報告によると、孫次郎様は領地の取り置きが上手く行かず、あの日伯父上に相談に上がっていたそうなのだが、それ自体を伯父上に咎められ自治権を剥奪されたという。その上に自分の城に帰ることも許されず、伯父上の城の一室へ監視をつけられ閉じ込められているという話だった。 私の頭は何故という二文字で埋めつくされた。孫次郎様は国宗家を継ぐ身ではないとはいえ、伯父上の子であることには違い無い筈である。隣で同じ話を聞いていた左衛門佐殿も理解に苦しむと言った顔をしていたので、問いかけたところで困らせるだけだと分かり、私は頭へ浮かんだ二文字を喉へ留めた。伯父上に直接聞いて見なければ答えが得られないことも分かったが、問うては自分も危うくなるというのは私もはっきりと感じた為、行動に移すようなことはしなかった。 更に数日して、今度は伯父上の使者が私の城へ訪れた。しかもどうしてか「その使者は香々見領内の端にある寺の住職を連れている」という門番の話を聞きながら、私と左衛門佐殿は急な来客に慌しく足を進め、使者を待たせている部屋へ向かった。 部屋にはいり使者の顔を確かめれば、私もよく見た顔だった。狭川内蔵助、私の父上が伯父上の右腕だったと言うのなら、この男は伯父上の左腕と言うべきだろうか。伯父上からの信頼は厚く、伯父上には絶対的な忠誠心を持っている国宗家の家老である。挨拶も程ほどに、狭川殿が口を開く。 「須野殿のお話は……耳に入っておられますかな、香々見殿。」 じとりと人を見る視線。目に弧を描き、口には含み笑いを浮かべる。私はどうも、この男が好きではなかった。 「小耳には挟んでおりまする。」 「いや全く。領民に戦の褒美を与えすぎて財政難に陥るとは愚かな御方。その上殿へ泣きつこうとは……。殿と血が繋がっておられるとはとてもとても信じられませぬな、」 私の返答を聞いているのかいないのか。狭川殿は私が言葉を終えぬ内に憤りを口にし、聞いてもいない事を勝手に喋り始めた。 だが、必要以上に人を貶めようとするその言葉のおかげで先日の話では見えなかった話が少し見えてきた。狭川御家老殿の曲解癖を私なりに少し正してみるならば、『孫次郎様は領民の働きに報いようとするあまり褒賞を配分する際、匙加減を間違えられた。そこで伯父上に工面を求めようとしたが、助けを請うどころか怒りを買ってしまい幽閉されるに至った。』というところだろうか。
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