第1章

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 僕には妹がいる。  名前は遥といい、年は九歳差で現在私立小町小学校の二年生である。  彼女はラフすぎて男の娘疑惑まで掛けられた僕とは違って、女子であること、お嬢様であることを常に意識した、独特の雰囲気を放っている。  第一が話し方。  口癖は「~ですわ」であり、僕のことはお姉さま、母のことはお母様、父のことは当然お父様と呼び、挨拶はごきげんようと挙げればキリがないが、つまり少々痛い古典的お嬢様言葉で話すのだ。  幼少期からそうなので、小さい頃は「~でちゅわ」と、天然でとっとこハム太郎のリボンちゃん状態となりそれなりに可愛かったのだが、今となってはもはや終わらぬ中二病に先行きも暗く、ただただ辟易するばかりの存在となってしまった。  第二が服装。  私立なので当然制服があり、学校にはもちろんそれを着て行っているわけなのだが、そうではなくプライベート状態での彼女の私服は口調よりも痛く、ある意味ものすごく独特であった。  なぜなら、フレンチロリータを着ているからだ。  彼女はロリータの語源となった少女より二歳ほど若いのだから、どうせ何を着てもロリータファッションになってしまうのだし、別にいいじゃないかと思うかもしれない。  だが東京の原宿や新宿ならまだしも、ここは寂れた田舎のしがない小地区である。取り寄せるのも一苦労だし、着て歩いていても大変目立つ。  僕は彼女の姿なら、百メートル先からだって見分けることが出来る。  それだけ目立つというのもあるが、引きまくった人が遠巻きにわらわらしているというのも、見分けるポイントの内にあるということを押さえておいてほしい。  そんな痛い彼女だから、外では様々な人物のいじめの標的になる。それを助けに行き、介抱してやるのが姉である僕の仕事なのだが、気高い彼女は助けてくれなんて死んでも言おうとしないので、彼女の友達の通報によって僕は現場へと駆けつけることになる。
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