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「それに、ここでは光希じゃなく、名字で呼べ……」 「あぁ、解ってる。光希」 「だから……!」 「しっーーいくら人があんま来ない旧校舎でも、見廻りが時々来るだろ、不純異性交遊をさせない為に。ここは穴場だから。だから、奥の部屋にいても大声出すとバレちゃうかもよ、我妻せーんせ?」 まるでホラー映画だ。 出口が一つしかない部屋に逃げ込んでしまい、そこへ殺人鬼が出口を封鎖するように立ち、絶体絶命のピンチとやらを味わう事になるような。 この状況はそれに愛が付け足させれたようなものだが、ヘアーワックスで逆立てている前髪から緊張の汗が垂れ流れていて、今は本当に嫌がっているのだと近づけた一歩を後ろへ下げた。 途端、彼は何も告げず、服を整えたらそそくさと出ていった。 僕はーー俺は柄にもなく、深い溜め息を吐いた。
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