105人が本棚に入れています
本棚に追加
「それに、ここでは光希じゃなく、名字で呼べ……」
「あぁ、解ってる。光希」
「だから……!」
「しっーーいくら人があんま来ない旧校舎でも、見廻りが時々来るだろ、不純異性交遊をさせない為に。ここは穴場だから。だから、奥の部屋にいても大声出すとバレちゃうかもよ、我妻せーんせ?」
まるでホラー映画だ。
出口が一つしかない部屋に逃げ込んでしまい、そこへ殺人鬼が出口を封鎖するように立ち、絶体絶命のピンチとやらを味わう事になるような。
この状況はそれに愛が付け足させれたようなものだが、ヘアーワックスで逆立てている前髪から緊張の汗が垂れ流れていて、今は本当に嫌がっているのだと近づけた一歩を後ろへ下げた。
途端、彼は何も告げず、服を整えたらそそくさと出ていった。
僕はーー俺は柄にもなく、深い溜め息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!