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俺、藤堂薫は同僚の我妻光希と付き合っている。 身体は毎日のように繋がっているし、心もちゃんと繋がっているはずーー俺の方が好き過ぎて相手の気持ちが判らなくなる時があるけれど、付き合って九年経った今でも傍にいてくれる。 自宅は世間体を考えて隣同士だと学校には話しているが実は同棲しており、俺としては毎日愛の巣を作っているつもりなのに彼ときたらコンクリートのように頑なで、それはそれは禁欲中の武士のよう……。 彼だって人並みの欲はあるはずなのに向こうから迫ってこないのは、それってつまりーー普段は明るいほうなのに一気に落ち込んでしまい、これから家庭科部の副顧問として家庭科室に顔を出さなければならないのに曇った表情をしていたら、女子だらけの部員達から質問攻めに遭うこと間違いなし、になる可能性が高い。 女性は人の落ち込んでいる原因が恋愛関係だと結びつけたがる傾向があり、思春期は特に強いので執拗に受けない為にも弱味は見せたくない のである。 ーーと、複雑な胸中になっている一方。 「あれ、ミキティ、何してるの~?」 家庭科室はグラウンドや校門が見える位置にあり、窓の前は通路でもあるのでグラウンドや部活棟に行くには必ずと言っていいほど通る道。 そこをスポーツウェアに着替えた光希が通りかかり、光希に好意的な女子生徒が声を掛けたというわけだ。
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