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「ーーん?」 部員は全員白鳥の湖を踊るように床に倒れ込み、太陽神を間近で見たように顔をそちらへ向ける事が出来ないようだ。 つまり、胸キュン。 誰もが彼の虜だ。 この高校に赴任した時にその魅力に気づいた誰かが口コミで拡げたせいでファンクラブが密かに創られ、想いを寄せている輩もちらほらいるようだから俺個人としては彼らを排除したいが、教師という立場的には難しい事に歯痒く思っている。 相手が女だろうが男だろうが、年上だろうが年下だろうが赤ん坊だろうが光希を愛していいのは俺だけだし、彼に愛されていいのも俺だけ。 この時も彼を止める事が出来れば、更にファンが増えることもなかったろうに。 「ーーこの匂いは甘いものを作ってんだな……光希に渡してやっかな……」 一方の俺は、二階の職員室から一階奥の家庭科室までの階段を甘い匂いを体内に取り込みながら降りていき、家庭科室前に群がる生徒達を掻き分けいった先にはマドレーヌを頬張っている光希が映った。
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