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Ⅰ
この教室の、前方隅の窓から見える姿が一番格好良く映えると最近知った。
それから、僕はその教室に行く度に一度はその角度に止まり、完全に閉じられていないカーテンからその姿を楽しむのだ。
「薫先生、顔にやけてる、気持ち悪い」
前方隅寄りの一番前の席にて、身勝手な理由で行わせていた小テストを一番に終わらせる女子・田中さん。
茶髪の地毛を二つ括りにしてい る目付きの悪い小柄な子で、もしや彼女は解っているのかもーー僕が何故その一角を好んでいるのかを。
解っているから毎度同じような毒を こちらへ浴びせてくるのかもしれないが、こちらとしては知られてもいい。
あくまで、僕側の意見としてはだが。
「大体終わってるし……さっさと答え合わせして 終わろうよ」
気だるそうな彼女に賛同した表情がちらほら見かけられ、二年二組の生徒数三十七人中三十五人は小テストを裏返しにしている。
その内の何人かは密かに携帯電話をいじっていたり、窓の外の暖かさを味わっていたりと暇を持て余しているのは明らかだ。
教師として彼らやその保護 者からクレームが発生しないよう、迅速に対応するのが現在の教師の努め……。
それに、大学受験は中学校から始まっていると主張する教育ママもいる事から、同僚や他市の教師は頭を悩ませているという。
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