プロローグ

2/3
前へ
/174ページ
次へ
 その夜、クレサークの城下町はやけに騒がしかったという。  夜も更け、人々の大半が寝静まっている筈の時刻にも関わらず、一度は消えた街の明かりが、一つまた一つと次々に火を灯していったらしい。  平凡な生活に浸った人々は、大層噂好きだという事は重々承知していた事だった。  元は平凡な生活を営んでいた俺は、その噂がやたらと早く広まるという事も、よくよく知っていた事だった。  空を飛ぶ馬車を見た。  目撃者が寝ている者を叩き起こす連鎖が更なる連鎖を生み、その噂は瞬く間に城下町全体に広がっていった。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加