プロローグ

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 平民には魔法を間近で見る機会すら滅多にない。  だからこそその空を飛ぶ馬車が珍しく、また馬車の消えた先が城だというのだから、刺激の少ない平民にとってはいい話題の種なのだ。  やれ貴族が乗っているだの、やれ国王が乗っているだの、王子の存在を知らない人々は、眠気などとうに忘れて日の出まで語り明かしていたのだとか。  その事を俺がウエストから聞いたのは、王子の部屋で一夜を過ごし、目覚めのいい朝を迎えていた、まさにその時だった。  基本的に注目されるのが苦手な俺は、嬉々として語るウエストの悪戯心にほんの小さな殺意を抱きながら、深々と溜息を吐いた。  クレサークは、今日も今日とて、凄く平和な国のようです。
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