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昼餉を終えた都季は部屋に戻り、文机に紙筆を出した。
偉進に文をしたためるつもりである。
娼妓は上級女にさえなればよいという単純なものではないのだ。
上級女になると、俗に上級女披露宴と称される御披露目の宴を三ヶ月以内に行うのがならわしとなっており、この宴の盛大さでのちのちの客筋が決まるとも言われている。
それは披露宴のために豪華な着物を新調すれば、追々呉服屋の主が礼をかねて座敷に訪れるという風潮が見られるためで、その折にこの娘は稼ぐ娼妓になると主が認めると、互いの利益を考えて得意客となってくれることが多い。
売上が多い上級女は、着物をいくつも所有するからである。
簪屋も同様である。
しかして披露宴に酒を卸した酒屋、はたまた祝儀の調度品をしつらえた商家など、縁は至るところにある。
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