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「ああ、構わないよ。」
ディングの言葉にはボルクが代表して答えた。
相変わらずため口なことにガルディスは呆れていたが、ディングは気にしていない様子だったため誰も口出しはしなかった。
ボルクの返事にディングは頷くと里穂の方を向いた。
「里穂、馬車の用意は出来てるか?」
「はい。
私が乗ってきた馬車を入り口に待機させてあります。
ただ、全員は乗れないかと…」
全員というのはエステリア達も含めているのだろう。
レジルーカからマリンポトーへ来る際に彼らも馬車に乗ったがそこまで狭くなかったからだ。
里穂の言葉を聞いたディングは、ふむ、と少し考えた後に悠香の方を向いた。
「悠香、我々は記憶石を使おう。
馬車をここまで往復させるわけにはいかないが徒歩で向かうのは時間が惜しい。」
「分かりました。
あんた達、マリンポトーの酒場で待ってるわよ。」
ディングの言葉に頷いた悠香はエステリア達にそう言い残すと先程ラーニュアとバルゴアが使った紫色の石を取り出し、姿を消した。
これでこの場にはエステリア、ボルク、ガルディス、里穂、そしてエステリアが救った男の五人が残された。
二人がいなくなると里穂は四人の方へ振り返り、自己紹介をした。
「初めまして。
私は特能隊の赤城里穂(あかぎりほ)って言います。
マリンポトーまでは私がしっかり護衛します。」
「よろしく頼むぜ、里穂。」
自己紹介を聞いたガルディスはおそらく名前を知っていたのだろうが、わざとらしく彼女の言葉に手を挙げた。
重い空気を少しでも明るくしようという彼なりの配慮だろう。
ガルディスの反応に里穂はニコリとヤバそうだ笑うと先頭を歩き始めた。
「あの、僕は…?」
「お前には聞きたいことがあるから一緒に来い。
それにフリジアーツへ行くなら色々準備が必要だろ?」
取り残されると不安になったのかエステリアの方を向きながら男おそるおそる口を開く。
それにはボルクが冷たい口調で答えたが、その冷たい口調を察したのか男は俯いてしまった。
それに気が付いたエステリアは彼に近寄り優しく話し掛ける。
「貴方、お名前は?」
「僕?
僕はターオだよ。」
「ターオさんですね。
さあ、行きましょう。」
エステリアはターオと名乗った男から名前を聞き出すとニコリと笑い、彼の背中を押して歩かせた。
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