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「貴方達は今までよく戦ってくれたわ。
ここからは私の仕事よ。」
ホーリスはそう言ってラーニュアの抱き起こすと翼で彼女を包み込んだ。
すると翼は金色の光を輝き始める。
「精霊龍に取り憑く邪悪な力よ。
今ここで浄化せよ!」
ラーニュアの体が見えなくなるくらいまで光は広がりしばらく彼女の体を包む。
そして、光が消えた時にはラーニュアとバリアントは分離しており、バリアントは気を失って彼女の横に倒れていた。
切り離しは成功と見ていいだろう。
切り離しが成功したことに一同が安堵しているとラーニュアが静かに口を開いた。
「強くなったわね、エステリア。」
声を掛けられたエステリアは急な攻撃に警戒しながらも彼女の前に立つ。
残りの仲間もラーニュアがいつ動いても対応出来るよう武器を構えておいた。
そんな心配をよそにラーニュアは続ける。
「エウル遺跡で初めて貴女に会った時から貴女には特別な何かを感じていたわ。
言葉ではうまく表情出来ないけど、他の人からは感じない何かをね。
そして、戦いを重ねる度に強くなる貴女は私にとって最高の好敵手となった。
それまで戦ってきた奴らは退屈な相手ばかりだったから本当に嬉しかったわ。」
「私は出来ることなら別の形で貴女と知り合いたかったですけど。」
褒められているのだが、相手が相手だけあって素直に喜べないエステリア。
そんな彼女の反応を見てラーニュアは少し楽しそうに笑った。
「天殺と体が融合した時にね、かつてない力が体中を駆け巡ったからその瞬間は凄い高揚感に襲われたの。
でもね、それと同時にもう人間には後戻り出来ないんだろうなって不安もあったの。
強い力には代償が付き物ってよく言うからね。」
誰に何を言われようと自由奔放な性格を崩さなかったラーニュア。
そんな彼女でも天殺の未知の力にはさすがに不安があったようだ。
そこまで話すとラーニュアは息を吐き、折れてしまった天殺に手をかける。
まだ戦うつもりだと判断した一同に緊張が走るが、エステリアだけは別の意味で嫌な予感がしていた。
「でも、もう終わり。
こうなってしまった私に生きる価値はないわ。
今までありがとう、楽しかったわ。」
「待ちなさい、ラーニュア!」
ラーニュアはそう言うと最後の力を振り絞って立ち上がり、瀕死とは思えない速度でエステリア達から離れる。
対するエステリアは嫌な予感が的中し、慌てて彼女の元へ走る。
そんなエステリアを見ながらラーニュアは今まで見せたことのない爽やか笑顔を見せると最後にこう言った。
「大好きだよ、エステリア・リーディア。」
「ラーニュア・レイス!」
ラーニュアは手にしていた天殺の切っ先を自身の心臓へと突き刺し、刺されたその体は光に包まれるとエステリアの叫びを嘲笑うように消滅。
危険四兄弟最後の一人、ラーニュア・レイスは自殺という形でその生涯を終えたのだった。
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