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ここは日本から遥か離れた異国の地、ウェキラス大陸。
ここの中心にそびえ立つ王都、フリジアーツは18年前の人魔戦争の影響をほとんど受けておらず、常に安定した治安を保っていた。
そしてそれは今も変わらず、ここでは平穏な世界が広がっていた。
そんな王都では今日、ある出来事が起きていた―
「おい、見たか?
あそこの張り紙。」
「ああ、見た見た。
姫さんの護衛の話だろ?
姫さんと戦って実力を認めてもらえれば護衛が出来るっていう。」
町人は今、一つの張り紙の話題で持ちきりだった。
それは王都の姫が旅に出るため、その護衛の選抜を行うというものだ。
これだけでも十分話のネタになるのだが、このイベントは何もかもが衝撃的なのだ。
まず護衛対象となっている姫は今まで一度も城の外に出たことがなく、一般人との交流がまるでないのだ。
そして肝心の実力の方だが、彼女はフリジアーツの剣姫(けんき)と言われている人物で王都では数少ない多属性使いなのだ。
そのため騎士団でも勝てる者は少なく、一般人ではとても条件を満たせる話ではないのだ。
何故こんなことになったかは数日前に遡る―
「なりません、姫様!」
大臣は姫の発言を聞いた途端、声を荒げてそれを否定した。大臣は髭をフサフサに生やした中年の男性だ。
対する姫―エステリア・リーディアはそれに全く動じていない様子。
「大臣、私の意見は今言った通りです。
悪の根元であったギスアークが滅んだ今なら以前よりは安全に旅が出来ると思います。」
そう言った瞳には強い意思が感じられ、ちょっとやそっとでは意見を覆しそうにはなかった。
長く縛らずに垂らしたピンクの髪。
気品さと動きやすさを意識した軽めの鎧、そして腰には護身用のレイピア。
17歳ということもあってまだ若々しいが、その綺麗な容姿は王都でも人気があった。
彼女は一度だけ大臣の方へ視線を向けた後、自身の父である国王へ視線を向けた。
エステリアの父である国王、バグレストは怖いくらい無表情で彼女を見つめていた。
外見は大臣よりも年老いていたが、その風格はかなりのものだった。
「一つ聞こう。」
重い空気が漂う中、バグレストは静かに口を開いた。
彼は感情の読めない表情でエステリアを見据える。
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