3『火花を散らす特能隊と危険四兄弟』

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それを見たラーニュアは真面目な口調のまま続けた。 「私だって暴れたいのを我慢してるんだから兄さんも我慢して。 それに邪魔しに来たのは私だけじゃないみたいよ。」 彼女はそう言うと自分が来た方向とは反対の方向を顎で指した。 するとその方向には赤髪で細いツインテールの髪型をした女性の姿が。 顔付きからして年齢は悠香やガルディスと大差ない二十歳前後だろう。 「ディング隊長、無事ですか?」 「お前さんは里穂か! よく来てくれた!」 ディングに里穂と呼ばれた女性は彼の言葉に頷きつつ、こちらへ駆けてきた。 これでお互いに頭数が増えたことになる。 最も戦闘がまだ続くならの話だが。 バルゴアは里穂の方をちらっと見てため息をつくと大剣を背中の鞘に刺した。 「こうも邪魔が入っては楽しさも半減と言ったところか。 ラーニュア、ここは退くぞ。」 「はいはい。 私は最初からそのつもりだったけどね。 それじゃあ皆さん、またね~。」 バルゴアの言葉にラーニュアは半ば呆れながらもエステリア達には笑顔で手を振り、懐から何やら怪しい紫色の石を取り出した。 「いずれ決着を付けよう。 その時を楽しみにしているぞ。 ククク…」 バルゴアもラーニュアと同じ石を取り出しながらそう言うと石に向かって何か呟いた途端、二人は姿を消したのだった。 おそらく瞬間移動に近いことが出来る石だったのだろう。 危険四兄弟の二人がいなくなったところでようやく一同から安堵の息が漏れた。 「今回ばかりはさすがにヤバかったな。 ラーニュアがバルゴアを連れて退いてくれたから助かった感じだぜ。」 最初に口を開いたのはガルディス。 彼の言うことは最もで、命拾いしたのはほぼ間違いないだろう。 皆それは分かっていたため、否定する者はいない。 「助かった、のか?」 戦闘が終わったのに気が付いた男はそう言いながらゆっくりとこちらに歩いてきた。 それを見てエステリアは柔らかく微笑む。 「はい、もう大丈夫ですよ。」 彼女の言葉に男は一安心したのかホッと息を吐き、それを見たディングは嬉しそうに頷いた。 「皆無事で本当に良かった。 さあ、ひとまずマリンポトーへ向かおう。 詳しい話はそこでな。 そろそろ作業員達も来るだろうし、ここにわしらがいつまでもいたら作業の邪魔であろう。 お前さん達もそれで良いかな?」
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