第1章

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コンビニへの買い物だろうか、週末だし昨夜も遅くまで起きていたみたいだし。と、雨宮は思考を出来るだけポジティブにめぐらす。 そうでないと今の自分を保てなくなりそうだったからだ。 (やっぱり――) (まさか――) 雨宮の心中はふたつの言葉でいっぱいだ。 「何処にいるんですか先生」 「どないした潤」 ハッと振り向くといつものように開けたウインドウに右腕を乗せスポーツワゴンを車庫入れしようと入ってきたばかりの矢代がいた。 雨宮が邪魔で車庫いれ出来ないのだろう、そそくさとその場を退き車庫入れを見守る。手馴れたそれはあらよっといった感じで終了し、矢代がコンビニ袋を提げて出てきた。 雨宮はあからさまにホッとし、息を吐く。 「どないした、潤。こんな時間に」 「せ、先生こそ飲酒運転じゃないですか」 「アホ。あのメールから何時間たったと思っとんねや」 「そうですけど・・・あの」 「じゃ・・・送ってくから車乗ってて、カギ開いてる」 「え? 」 「荷物置いてくるから、ちょっとまっとって。話は車ん中で聞くわ」 「矢代先生っ」 「・・・ごめんな潤。今日俺、予定あるんよ」 「そんなっ」 (そんなの聞いてない) いや。昨日まではそんな予定は無かったはずだ。 きっと。 きっと、あのひとだ――。 矢代はさっきまであのひとと会っていて、また今日もあのひとと会うのだ。 何のために? 何の・・・ために・・・? 「ただいま・・・」 「おかえり。アキ、荷物をこっちへ」 「ありがとう、正司さん」 いつも通りの笑顔、いつも通りのやりとり。 違うのは声のトーン。絶対音感を持つアキだからこそわかる、少しの声の高さ、半音狂った気持ちの悪さ。 「どうだった? 武者修行は」 「うん。演奏で成果を見せるから」 嫌なのは笑いたくもないのに笑っている自分。そして作り笑いなどとっくに見透かされてる事実。 「アキ」 「なに? 」 「・・・お腹空いてないかい? 」 「うんん。大丈夫」 「早く一人になりたい? 」 「そんなこと無いけど。どうして? 」 「どうしてかな? 」 「正司さん? 」 「アキ。そろそろ本当のことを言ってくれないか」 「・・・・・・え」 「その身体に染み付いた誰か他の男の匂いがわからないとでも思っているのかい」 「匂い、なんて」
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