第1章

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「潤がおねだりとは珍しいなぁ」 「だって・・・いっぱい・・・したんですよね・・・あのひとと」 「・・・あいたたた・・・やきもちかいな・・・まぁ嬉しいけど」 「俺とどっちが善かったですか? 」 「潤が善かった」 「ウソだ」 「俺は潤に惚れとんのやから潤が善いに決まってる」 「ホントに? 」 こめかみに流れる一筋の涙。 「ホンマや」 体繋げたまま抱き締めあう。 「ホンマにゴメンな潤」 身長差から潤の頭を抱え込むようにして抱いていると、頭がもぞもぞと動くので手を緩めてやった。すると、腕の隙間から顔をのぞかせたせた潤が瞳にたっぷりの涙を浮かべて。 「愛してます。忍さん」 ニコっと笑った拍子に涙は零れ落ち、直後の矢代のキスの嵐に何で濡れているのかわからなくなる。 「びっくりさすな」 「すみません」 「あほ。怒っとらん」 「ただ」 「なんですか? 」 「猛烈に嬉しいだけや、ボケ」 キスの合間に囁けば嬉しそうに笑う雨宮の笑顔。 めったに見ることの出来ないお宝だ。 一方、東京湾岸高層マンションでは。 「ただいま」 「・・・ただいま」 「おなか空いたろう? アキなにが食べたい? 」 「正司さんは? 」 「ん? 」 「正司さんは何が食べたい? 」 上目がちにみつめられ、正司は困った子だねと、締めかけたギャルソンエプロン解いてテーブルに置いた。 「僕はアキが食べたいかな」 「本当に? 無理してない? 」 「無理なんかしてないさ。もういいんだ。僕は君に片思いだった頃からずっと君を食べたくて食べたくて、仕方がなかったんだから」 「でも俺裏切って」 「僕の愛が足りなかったってことかな」 「そんなっ」 「今度はアイツが目の前でどんなにイチャついてても、しらっと通り過ぎることが出来るくらい僕のことで頭一杯にさせてあげるから」 「どうやって? 」 「日々の暮らしの中で」 「毎日? 」 「そう毎日。たくさん愛してあげるから。いろんなカタチで。セックスだけじゃなくて、食事や生活、ピアノももちろん。いろんな面からキミをポートしていきたい。気持ちの意味では、いつでも寄り添って生きていたい」 「今までも。そうだったじゃない」 「うん。でも今まで以上に」 「すごいな。正司さんは」 「なにが? 」 「俺、正司さんに裏切られたらもうダメかも」 「裏切らないよ」 「・・・だよね。うん、わかってる」
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