第1章

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「アキ。愛してる」 「・・・ありがとう。正司さん」 「返事は? 」 「俺も・・・・・・・ごめんなさい」 「アキ? 」 「裏切って・・・ごめんなさい・・・悪いことして、ごめんなさい」 泣いてはいなかった。ただ静かに、反省の言葉をこぼす。 「アキ」 正司が両手を広げた。 立ちすくむアキが吸い込まれるように正司に抱きついていった。正司の首に腕を絡ませ頬と頬を寄せ合うと、正司はアキの背中を優しく抱き寄せた。 「僕の一生の恋人、君をずっと愛してるよ」 「俺も・・・愛してます。正司さん」 「僕の骨はアキが拾ってね」 「ヤダっそんなのヤダっ」 「拾ってくれないのかい? 淋しいなぁ」 「やだっ死んじゃやだよ正司さんっ」 「ふふ。考えたことなかったからびっくりしたのかな? アキ。生きているものはいつか死ぬんだ。だから愛するものを裏切っているヒマなんてないんだよ。いつ時間切れになるかわからないんだからね」 「正司さん・・・」 「さぁ。ベッドに行こう。君をたっぷりと愛してあげる。忍のことなんか夏の夜の夢だったと思えるくらいにね」 長いキスの後、抱擁を解いて手を繋いでベッドルームへと向かう。 「俺、正司さんに出会えて本当に良かった」 「僕もアキに出会えたことを感謝してるよ」 「本当に? 」 「もちろん」 「よかった」 それはアメリカに行く前の無邪気なアキの笑顔だった。 そして寝室のドアがゆっくりと閉められた。 「五日間あっという間やったなぁ」 「そうですね」 成田空港ターミナル、宗助がアメリカに帰る日。 「先生ありがとね。送ってくれて」 「おう」 「・・・・・」 「どうした、楽人」 「先生達。何か、あった? 」 「!?」 「バッ・・・」 宗助が楽人の口を塞いで数メートル先のインフォメーションの陰に拉致する。 「どうしたの。宗ちゃん」 「バッカだなぁ楽人。見てわかんないのかよ。先生達も俺たちと、同じ」 「え? え? え~~~~っ」 「し~っ!」 「さ~お~と~め~」 「うわっ矢代センセ」 「そうなの? 先生」 「うん? まあ、せやな」 ちょっと困ったように矢代が頷く。 「そうなんだぁ」 頬を上気させた楽人が言えば。 「おめでとう先生」 と宗助が右手の握りこぶしを出す。 「なにがや」 「やっと念願叶ったんだろ? 」 「まあな」 矢代は大きな右手の握りこぶしをコツンとぶつけた。
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