第1章

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いつか宗助の元に一人で行けるようになるための、始めの一歩。 いままで蝶よ花よと大事にされすぎてきてしまったけれど、もっと一人で外に出なければ。 人目が気になっても、痴漢にあっても、からまれたって、構わない。 一人で戦える力を養うんだ。 「オマエいくら持ってる? 」 「一万五千円くらいあるよ」 「なんかあったら俺のケータイかけてこい。ええな? 」 「そんな心配しないで。家に着いたら連絡するね」 じゃ。と駅へと続くエスカレーターを降りてゆく楽人を見送って二人はなんともいえない気分になる。 「子離れできませんね、お互い」 「あの二人は特別にな」 「我々も帰るとしますか」 「どっちの家に帰る? 」 「それはもちろん、小鳥遊からの連絡にそなえて、ココから近い方ですね」 「え? じゃあ」 「もちろん。小鳥遊の帰宅連絡があるまでは、オアズケですからね」 「小鳥遊~。頼むで~寄り道せんでくれよ~~っ」 そう、これが僕たちの夏休み―― おわり
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