129人が本棚に入れています
本棚に追加
序 章 あの日
B747-400-47C
春野桃子は、目の前の真っ白な機体を見上げた。
政府専用機は太陽を反射して、いつもより輝いて見えた。
――今日、ついに空中輸送員として初めての任務運航を迎える。
桃子は緊張をかみしめながら、辺りを見回した。
機体周辺では、整備員が出発の準備に余念がない。
政府専用機の開け放たれたドアには、パッセンジャーステップ車が取り付けられ、機内へと続く道ができていた。
桃子は階段の一段目から順に視線を上げていき、その先にあるドアを見つめた。この光景を見ると、自然とそこに立って笑った彼を思い出してしまう。
桃子は、真っ青な空を見上げた。
はじめて彼とあったのは、上京したての春だった。
あの日、彼に出会わなければ、きっと自分は今ここにはいない。
そう、思い起こせば
すべてはあの日、航空神社からはじまった――。
最初のコメントを投稿しよう!