第9章  仲間

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     *  11月22日(月) 検定まで残り16日  桃子は洗面所で、ひとり目をしょぼしょぼさせていた。   今日は座学で、ウエイト・アンド・バランスという航空機の重量と重心位置を求めるための計算中心の授業だった。  貨物関係全般は空中輸送員の管轄で、これらの計算は航空機が安全に航行するために欠かせないものだ。  桃子たちは 一日中数字とにらみ合い、先ほど授業が終わったところだった。  その時、洗面所の扉が開いた。 「春野三曹、今日の夕飯知ってます?」  ゆいが入ってきながら、桃子に声をかけた。  このあと皆で隊員食堂に行く。 「ううん、知らない。なに?」 「酢豚です。私、酢豚のパイナップルが意外に好きなんですよね」  桃子はゆいと鏡越しに話した。  見た目によらず食いしん坊なゆいは、必ず食堂のメニューをチェックしては、桃子に報告していた。 「そうなんだ、わたしはそんなに好きじゃないかな。あ、そうだ。わたしあとで行くから、先に行ってもらっていい?」 「構いませんけど、どうしてですか?」 「うん、ちょっとね。すぐに行くから」 「……わかりました」  ゆいは不審な表情を浮かべたまま、洗面所を出て行った。
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