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嘉納くんはまるで
私を包み込むような姿勢を変えない。
心臓の鼓動が、早い。
顔が、熱い。
気付かれたくなくて俯いた。
「……なあ。それでほんとにいいのか?」
少し掠れた低い声。
見上げなくても嘉納くんが怒ってるのがわかる。
なにを、怒ってるんだろ?
「おまえ、瀬戸のこと、好きだったんだろ?」
……一瞬、肩がびくりと震えた。
なんで嘉納くんが知ってるの?
「過去のこと、だよ。
いまは同期で友達だと思ってる」
……確かに私は。
ずっと瀬戸くんに片思いしてた。
瀬戸くんが私の思いに
応えてくれないのも知ってたし、
瀬戸くんも私の気持ちを知ってて、
知らないふりをしてくれてた。
優しいけれど、苦しい関係。
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