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「主任、ありがとうございました」 「ん、あぁ」 アパートの前まで送ってくれて、 シートベルトに手を掛けようとした私の手を…、ギュッと主任に掴まれたから、 なんだろうと見上げると、 息の掛かりそうな距離で、 主任が真っ直ぐに私の瞳の奥をうかがうように見つめてくるから、 ドキッとしてしまった。 艶っぽい瞳に捕らえられたような錯覚に陥りそうで……。 少し、いたずらっぽい表情に変わった主任の声を聞きながら、動けなくなってしまった。 「お前さぁ?少しは俺のこと警戒しろよ。俺も一応、男だからさぁ。 ふっ、おい、聞いてんのかよ?」 「……あ、はい」 そんな私の様子を見つめながら、私からゆっくり身を引いて、 ふっと軽く笑ってから、コツンと額を指で弾かれた瞬間、漸く現実に引き戻された気がした。 「本当かよ?俺の前で、気持ち良さげに寝てたクセに」 「…ごめんなさい」 主任の言葉に、そう言って謝ることしかできなかった。
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