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「離れたりしない!
海翔さんに嫌われても、私は嫌いになんか絶対にならない!
そんなこと、怖がらなくていい!」
泣きながら、怒るように言えば、
「してきたことは、消えないだろ?
俺、自分が傷付くのが嫌で、酷いことばっかしてきたんだ。
芽依が軽蔑するようなことばっか」
苦しそうに、声を震わせながら続ける海翔さん。
「そんなの過去のことだよ。
私だって、海翔さんに比べたら少ないかも知れないけど。彼氏居たもん。
そんなこと言ってたらキリがないよ!
それに、反省してるじゃない。
海翔さんのこと、軽蔑なんてしない」
ポロポロ……零れる涙が止まらなくて。
でも、なんとか自分の気持ちを解って欲しくて。
藁にもすがるような想いで声を出し続けた。
「……今なら、まだ、芽依のこと、諦められる…」
「なんでそんな勝手なこと言うの!?やだ!!好きなのに、イヤー」
「俺、芽依のこと、今みたいに泣かしてばっかだから…」
「だって海翔さんがそんなこと言うから。もー言わないで!聞かない!」
海翔さんの声が聞こえないように、
咄嗟に耳を塞いで布団の中に潜り込んだ。
あとから、あとから……、
枯れることない涙が溢れ続ける。
***
どれくらい、そうしていたか、
気づいた時には、
海翔さんの胸に抱き寄せられていて。
「…芽依、泣かして、ごめん。
精一杯、大事にするから、もう泣くな」
「……もう、言わない?」
「あぁ、言わない」
海翔さんの声を聞いて、
やっと安心することができた私は、
そのまま泣き疲れて眠りに落ちたようだった。
大好きな愛ぉしい人の腕に包まれて……。
過ぎ去ったと思っていた過去のことで苦しむことになるなんて知らずに。
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