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颯介さんがお店の奥へと消えて。
「いつも、あんなんだから。
聞き流してればいいからな」
「……え、あ、うん」
私を気遣うように…
正面の席から、心配そうに声をかけてくれた海翔さんに返事を返していると、
美味しそうな匂いと一緒に美味しそうな料理が運ばれてきた。
「アツアツだから、気をつけて食べてね?」
そう言って、
あっという間に…テーブルに並べられた湯気をあげる料理は、
どれもこれも美味しそうなものばかり。
「これが、チキンと有機野菜のポトフ。ポークソテーの三種のチーズソース添え。ホクホクポテトのグラタン。キャロットラぺっていうのは、ニンジンのサラダのことね。
それと根菜のホットサラダ。
どれもおススメだから。さぁ、あったかいうちに食べてみて」
「うわぁ!!おいしそう!!いただきま~す!」
あまりの美味しそうな料理に感激した私が感嘆の声をあげると、
「そんなに喜んでもらえると、作った甲斐があるよ」
蕩けるぐらい優しく微笑んでくれた颯介さんに思わず見とれてしまった。
「芽依、そんなに見とれてると、食われるぞ。これくらい俺にだって作れるし」
そう言って、ゆっくりお皿に取り分け始めた海翔さん。
今のってヤキモチだよね?
「なに、海翔、ヤキモチやいてるのか?」
「うるさい。それより飲み物。車だからペリエでいいから」
楽しげに笑いながら言う颯介さんの言葉に、
素っ気なく返す海翔さんはどんどん不機嫌になっていく。
「はい。かしこまりました」
私がそんな可愛い子供みたいな態度の海翔さんを見つめていると、
颯介さんが横を通りすぎ様に、
「海翔を変えてくれてありがとう」
ポンと頭を軽く撫でながら呟くように言ってから奥へといってしまった。
私は言われた言葉の意味がよく解らなくて。
ただ、その後ろ姿をぼんやりと眺める事しかできなかった。
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