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*五十嵐颯介side* 海翔と芽依ちゃんを店先で見送っていると、 ふと…海翔が小さかった頃のことを思い出した。 純粋で心根の優しかった海翔は、 いつも猫や犬を拾ってきては彩乃を困らせていたっけ。 まさか獣医になるとは思わなかったけれど……。 そんな海翔が小学校の高学年になる頃には、 子供らしさがなくなって、感情を表に出さなくなっていった。 きっと、 普通とは違う家庭だって気づいたんだろうな? それで、 母親である彩乃の負担になりたくないとでも思ったんだろな? でも俺は、 解っていても、 なんにもしてやれなかったんだ。 ただ、 時々、一緒に遊んだり、見守ってやることしかできなかった。 年を重ねて、見かけだけは大人になった海翔。 寂しさを間違ったことで埋め合わせしてんだろうな……ってことも薄々は感じていた。 それでも、俺は何も言ってやることなんてできなかった。 結局、 海翔がどんな想いをしてきたかなんて、 海翔にしか解らないんだから、 俺なんかがとやかく言うことなんてできる筈がない。
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