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「ざまぁみろ。 それより、お前の付き合ってる男って、五十嵐海翔なのか?」 急に、真剣な表情になった主任の口から出た名前に驚いてしまった。 「……え?!なんで知ってるんですか?」 「ん、まぁな。 アイツ走って来たと思ったら、 さっきからウロウロしてんだよ。 お前のこと探してんじゃねぇのか?」 主任に促されて、 私が振り返って視線を向けた先には、 私を追いかけて来たであろう海翔の姿があった。 駐車場の入り口から、 そう離れてない私達のいるこちらに向かって立っている。 とても驚いた表情をして……。 それに、 私じゃなくて、 松岡主任を見ているように見える。 見ているっていうよりも、 睨み付けてるって感じだ。 「どうしてお前が芽依と居るんだ?芽依から離れろ」 そして、低くて冷たい声が放たれた。 「…海翔?」 ………なんなの? このピリピリした空気。 どういう知り合いなの? 「ハハッ、嫉妬かよ? そんなに大事なら泣かしたりすんな」 松岡主任も笑っているけど、 目が全然笑ってないように見える。 「主任?」 二人とも、 私の声なんて聞こえてないようだし。 私は、 訳が解らないまま、 松岡主任から少し離れて、 二人の顔を見比べるようにして、 ただ、見ていることしかできなかった。
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