*9*

16/32
前へ
/32ページ
次へ
「海翔」 後ろから抱きしめられたまま呼べば、 「ん、どうした?」 直ぐに、私の好きな低くて優しい声が返ってくる。 凄く安心するけど、不安で堪らない……。 いつのまにか、 海翔の存在が大きくなりすぎていて、 海翔を失うのが怖くて堪らない……。 「私、どうしようもないぐらい海翔が好きみたい。 だから、海翔が他の人を好きになるのが怖い」 言った瞬間、 力任せに強く抱きしめられた。 「芽依以外を好きになんてならない。 生まれて初めてなんだ。誰かをこんなに好きだって、愛してるって思えたのが。 だから、ずっと一緒に居てほしいと思ってる。 できれば一生離したくない」 「そんなこと言っても知らないから。私、信じちゃうよ?」 「信じて欲しい」 そして、 真剣な声色で、 耳元で紡がれた言葉は… 私の心を身体を全てを捕らえて離さない。 海翔は、本当に意地悪だね? プロポーズみたいなこと言うんだもん……。 そんなこと言われたら、 もっともっと海翔のことを好きになる。 人の心なんてどうなるか解らないのに、 永遠なんてことを夢見てしまう。 どうして、海翔じゃなきゃダメなんだろう? 嫌な想いをさせられたばかりなのに。 胸がキュッて締め付けられて、苦しくて堪らない。 人を好きになることが、 こんなに苦しくて、切ないことだったなんて、知らなかった。 それでも、私は海翔と一緒に居たいと思ってしまう……。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1070人が本棚に入れています
本棚に追加