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暫くして、 動物病院に帰った私達を待っていたのは、 海翔にキスをしてた女の人っだった。 「ちょっとー、遅いじゃない!」 さっきと同じ苛立ったような冷たい声。 「なんでまだ居るんだよ!?」 それにも負けないぐらいの、 海翔の冷たくて低い声が響き渡った。 「何よ、鍵も掛けないで出ていったクセに。 人がせっかく留守番しててあげたっていうのに。 何、その言い方。 それに、私も芽依ちゃんに謝りたかったし」 海翔と言い合っている女の人は、 言葉はとてもキツいものに聞こえるけど、 そんなことを気にもさせないくらい、 スタイルも良くて、本当に綺麗な大人の女性って感じの人だった。 どこにでもいるような私なんかよりも、 この人が海翔の隣に居ることの方が、 ごく自然のことのような気がしてくる程に……。 「リカ、お前、何言ってんだよ? もう良いから帰れよ!」 海翔の呼んだ名前を聞いて、 モデルのRikaの姿が頭に浮かんできた。 そしてRikaと目の前に居るこの女性とが同一人物であることが解った。 その瞬間、 前に主任が言ってたRikaのことが頭に浮かんできた。 もう、嫌な予感しかしない。 ここに居たくないって思うのに、 身体は言うことを聞いてはくれない。
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